日時:平成31年2月9日(土)
場所:長崎大学医学部保健学科

 平成30年度の卒後セミナーでは、関西大学社会学部社会学科心理学専攻准教授の細越寛樹先生をお招きし、「慢性疾患患者の認知・行動にアプローチする心理教育的介入の理論と実践」というテーマでご講演いただきました。

 第一部は「慢性痛への認知行動療法に関する概要」というテーマから、苦痛と苦悩の違い、認知行動療法の基本的な考え方を教えていただきました。認知行動療法の基本原則として、出来事に対する人間の反応を認知・感情・行動・身体の4側面に分けて考えるという観点から、慢性痛の症例を例に挙げ4側面に分ける作業を実践することで、認知行動療法の基本を学びました。

 第二部では、「基本的コミュニケーションスキル」として、患者と信頼関係を築き医療的な質問を行うためのコミュニケーションの方法について学びました。手押し相撲を例に挙げたユーモアな説明や、同じやり取りでも話す順番を間違えるだけで患者さんとの信頼関係を築くことは困難となってしまうこと等を分かりやすく説明していただきました。

 第三部では、「慢性痛に対する認知行動療法の実際の技法」について、デモ映像を交えて説明していただきました。会話の端々にポイントとなる言葉が埋め込まれており、それをきっかけに患者さんが痛みに対し少しずつ前向きになっていく姿勢が伝わってきました。

 今までの臨床では痛みの程度や質など、痛みそのものを正確に捉えることを行ってきましたが、患者さんが痛みをどのように捉えているか、痛みによってどういう感情になっているかを知ることが大切であることを学びました。特に「痛みに人生のハンドルを握られるのではなく、たとえ痛みが一緒でも自分がハンドルを握る」という言葉は印象的で、患者さんに痛みを前向きに捉えていただけるよう、今日のご講演を今後の臨床に生かしていきたいと感じました。(文責:小路永 知寿)