場所:長崎大学医歯薬学総合教育研究棟2A(オンラインとのハイブリッド形式)
日時:令和6年2月3日(土)
テーマ:多疾患併存・重複障害の複雑さを紐解く―内部障害の併存に対する介入戦略―

令和6年2月3日に令和5年度の卒後セミナーが開催されました。今回は長崎大学医歯薬学総合教育研究棟2Aでの対面とオンライン配信のハイブリット開催となりました。
特別講演では豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科の飯田有輝先生に「多併存疾患・重複障害の病態に基づいた理学療法」というテーマでご講演いただきました。


「多疾患併存についての概論」、「疾患の併存による難治化の病態メカニズム」、「急性期における多疾患併存の理学療法戦略」という3つの項目に沿ってご説明いただきました。まず、近年の高齢化に伴い多疾患併存が増加し要介護状態につながり予後不良となること、次に1つの疾患が多臓器連関を通じて他臓器に影響をおよぼし、高齢者では免疫不全や慢性炎症を起こしやすく難治化しやすいということ、最後に併存する疾患をステージ別に分け、理学療法の目標と介入を明確にし、高齢者においては廃用症候群の対策を行い、各疾患のガイドラインに沿ったリスク管理を実施することが重要であることを説明していただきました。

話題提供1では霧ケ丘つだ病院の新貝和也先生(保健学科5期)から、「急性期における多疾患併存・重複障害の実際:呼吸器疾患と循環器疾患が併存した症例」についてご講演いただきました。臨床で難渋することの多い心不全および呼吸器疾患増悪を呈した症例を提示していただき、その典型的な症状である「息切れ」に着目した報告となっており、息切れと呼吸困難の違い、運動強度の考え方の違い、その経過についてなどをわかりやすくご説明いただきました。

話題提供2では長崎リハビリテーション病院の小川健治先生(保健学科5期)から「回復期における多疾患併存・重複障害の実際:循環器障害と脳血管疾患が併存した症例」についてご講演いただきました。回復期病棟に入棟される脳卒中患者はその多くが高齢であり心不全を有しているため、脳卒中と心不全の各疾患の運動負荷の決定方法について考慮しながら、栄養の評価を含め多職種で連携しリスク管理を行い、理学療法プログラムをすすめることの重要性をご説明いただきました。

全体討議では、「どのような臨床の介入を行うか?」という点と「どのような学び方・教育の方法を行っていくのか?」という2点について各先生から意見をいただきました。多疾患ゆえに患者さんの身体活動量の向上の難しさがあり、環境面を調整し体力を向上していくための工夫が必要であること、そのために評価や数値化は欠かせないということを話されていました。また、教育については新人や経験不足の場合、運動負荷が軽めになりやすいという問題があるため、プロトコルを作成しそれに準じた介入を行い、逸脱する場合は指導者に相談しながら介入するということ、OJTに沿って対応すること、多職種でみていくことが重要であるということを話されていました。参加された方にとって臨床に活かせる有意義なセミナーとなりました。ご講演いただいた飯田先生、新貝先生、小川先生ありがとうございました。(文責 田中陽理)