日 時:平成29年3月4日(土)
場 所:長崎大学医学部保健学科 101講義室

 平成28年度の卒後セミナーでは、国立長寿医療研究センターの牧迫飛雄馬先生をお招きし、講演して頂きました。司会は長崎大学の平瀬達哉先生に務めて頂きました。

 牧迫先生には「高齢者における身体・心理・認知機能低下の病態理解と介入戦略」についてご講演頂きました。特に高齢者における機能低下については、身体面や心理面、認知面などと多面的に捉えていく必要があること、そしてこれらの機能低下の予防には運動介入が効果的であることを、最新の研究報告や国立長寿医療研究センターの取り組みをもとに詳しくお話しして頂きました。さらに、国立長寿医療研究センターが作成した認知症予防の運動として広く知られているコグニサイズについても、その介入効果も含めて教えて頂きました。

 続きまして、牧迫先生に加えて長崎大学の平瀬達哉先生、十善会病院の山口晃樹先生、長崎友愛病院の引地優人先生を交えて高齢者に対するリハビリテーションについてのシンポジウムを開催致しました。司会は長崎大学の平瀬達哉先生・坂本淳哉先生に努めて頂きました。平瀬先生からは「介護保険領域における生活期リハビリテーションを考える」というテーマのもと、生活期リハビリテーションの現状や生活期リハビリテーションにおける多職種協働の意義についてご紹介頂きました。特にリハビリ専門職が生活の視点をもつこと、介護職が自立支援の考えをもち、できる能力に焦点を当てた介入を進めていくことがQOLの向上につながることを再認識できました。

 山口先生からは「高齢者に対するリハビリテーションを再考する―医療機関の立場から―」というテーマのもと、急性期病院である十善会病院の入院患者の現状についてご紹介頂きました。特に現在のトピックスであるフレイルに着目して入院患者の特徴を説明して頂き、早期離床をはじめとした身体活動性の重要性や運動機能のみでなく、心理面に対する介入も重要であることを報告して頂きました。

 引地先生からは「高齢者に対するリハビリテーションを再考する―地域介護予防の立場から―」というテーマのもと、長崎県における高齢化の実態や地域の予防事業で行われている取り組みについてご紹介頂きました。特に転倒しやすい高齢者においては二重課題処理能力の低下が指摘されていることを背景に、長崎大学の中垣内研究室で進められているデュアルタスクトレーニングであるスクエアステップについて、その介入効果を様々な視点から報告して頂きました。

 各先生から報告を頂いた後には、セミナー参加者からの質問や今後の地域高齢者に対するリハビリテーションについての熱い討論が行われました。また、牧迫先生にはセミナー後の懇親会にもご参加頂き、活発な情報交換が行われ、多くの御助言を頂くことができました。またの機会にぜひ、牧迫先生をお招きしてこのようなシンポジウムが開催できる日を楽しみにしています。(文責:広報部 井上 恒平)