完全オンライン開催
日時:令和4年2月12日(土)
テーマ:心腎疾患に対する理学療法の最前線―心腎連関から考える運動療法―

 特別講演では順天堂大学の齊藤正和先生に「心腎連関の機序から紐解く新たな理学療法戦略」というテーマでご講演いただきました.心腎症候群の基礎知識に加えて,その分類に基づいて急性期から慢性期まで詳しくお話していただきました.その中で「圧と水を診る」というキーワードを挙げられ,血圧,尿量,浮腫や体重の変化に着目した上で理学療法を行う重要性を説明していただきました.

 シンポジウムでは長崎大学病院の矢野雄大先生(保健学科3期生)に「心・腎機能障害が併存した症例に対する理学療法 心疾患を契機としたケース」というテーマで話題提供をしていただきました.心臓外科術後の持続的腎代替療法(CRRT)患者の急性期の理学療法では医療用チューブやカテーテルの抜去・閉塞のリスクについて臨床工学技士と連携を図り,易疲労性に対しては管理栄養士との栄養面の検討や,看護師と介入時間の調整を行うといった多職種協働のアプローチが重要であることをお話していただきました.

 続いて,飯塚病院の大坪翔先生(保健学科5期生)に「心・腎機能障害が併存した症例に対する理学療法 腎疾患を契機としたケース」というテーマでの話題提供をしていただきました.外来透析患者に対する運動療法では時間の制約があるため,医師・看護師・臨床工学技士と協働して,効率よく介入する必要があることなどをお話していただきました.現状ではリハビリテーション料が算定できない中で,症例の運動意欲まで考慮された理学療法を実践されている様子に驚かされました.

 矢野先生,大坪先生からの話題提供の後に,全体討議が行われました.その中で,「心腎症候群患者の身体活動量を増加させるためにどのような取り組みが必要か?」という質問に対して,3人の先生方がそれぞれの意見を述べられました.具体的には,対象者を評価した上で,適した目標設定を行い身体活動量向上に対する意欲を維持していくこと,生活習慣を把握した上で対象者に適したアプローチを継続することが重要であるといった議論が行われ,今回のセミナーは心腎症候群患者に対する理学療法戦略を考える上で,大変意義深いものとなりました.(文責:百合野大輝)